日本人は、言霊信仰といって、言葉にしたり文字に書くと、それの内容が現実になるというオカルトを未だに無意識ながらも信じている民族なんでしょうね。
というのは、前回書いたなでしこジャパンが、予想通り米国に完敗した後の反応を見ていてのことです。
なでしこの準優勝に関する反応はだいたいこんな感じでしょうか。
・決勝は完敗だったが準優勝でも素晴らしい。
・決勝で大量失点した後も諦めずに点を取りに行った精神力は素晴らしい。
・次はオリンピックで雪辱をはらして欲しい。
・女子チームに対して男子チームは不甲斐ないので、協会は女子チームの強化にこそ力を入れるべき。
でも、これって、すごく本質から目を背けてますよね。
一つ目の準優勝という結果が素晴らしいという点については、確かに結果だけを見ればそうかもしれませんが、前回書いたとおり、ドロー運に恵まれるなどのことがあってはじめてできたことで、決勝以前に米国やドイツを相手にしていたらどうだったでしょうか。
二つ目についても、元々米国のゲームプランが序盤に隙をついて勝負をかける作戦だったわけで、大量得点を得た後ならペースダウンするのは当たり前。そんなチームに点を取っても、実力に差がなかったとは到底言えません。
そして三つ目ですが、これが一番恥ずかしいというか情けないというか、捕らぬタヌキの皮算用で、もう次のオリンピックでメダル争いが出来ると思いこんでいること。
今大会の予選からの経過をご存じなら分かることですが、今回の女子サッカー日本代表は、世代交代に失敗して、やむを得ず確実に戦力として数えることの出来るベテラン中心のメンバーで本大会にのぞみました。
そして大会中も、ベテラン選手の疲労が偏らないよう、グループリーグで全選手を使い切るというギリギリの戦い方をしなければならず、トーナメントに移ってからは疲労を無視して固定メンバーで戦うだけになってしまい、毎回同じ戦術のプランBが無いチームとなっていました。
何度もいうようですが、ドロー運に恵まれなければそうそうに敗退していてもおかしくなかった戦力しか持ち得ておらず、その限られた戦力で結果を出したことを賞賛することは出来ても、日本女子サッカーチームの実力は、4年前よりも弱くなっていたと見るのが妥当でしょう。
それが、さらにベテランを戦力と数えるのが難しくなる次のオリンピックで、しかも、米国が対日本用の戦い方のお手本を示してしまった後で、プランBが無い日本がどうして勝ち上がれると安穏と出来るのか分かりません。
最後の四つ目については、もはや男子チームを貶めるための引き合いに使われているだけとしか思えないような状態になっています。
持ち上げられているはずの女子チームですが、代表こそもてはやされているものの、ブームが過ぎ去った現在クラブチームの観客数は減り続ける一方で、そんな状態で誰がスポンサーとして投資してくれるのでしょう?
男子チームが未だアジアレベルから抜け出すことが出来ず歯がゆいのは同感ですが、その引き合いに女子チームを出すのは明らかにおかしい。
で、ここからが本題なのですが、こういう趣旨の反論をすると、大抵私は叩かれるんですよね。
少なくとも、感情論だけの4つの主張に歴とした根拠がないのはこれまで書いたとおりなのですが、どうにもこれを理解して貰えない。
その理由は何かと考えると、やはり、言霊信仰による「悪いことが起こると言えばそれが現実になる」という無意識下の心の働きなのかなと思うわけでして。
でも、戦争反対と唱えていれば戦争が無くなるわけではないのと同じく、問題があるならその理由から目をそらさずきっちり吟味して根本の原因を解決するなり、そういう事態に陥らないように上手くコントロールするしかないはずなのですが・・・